逆さクラゲ

長い文章

短歌

図書委員の会報みたいなやつに載った短歌です。



明るさの自動調節



  • 満月のみずうみをうす明き千の兵士の薄氷ふんでゆくふゆ


  • 三月のでんきうなぎは泥の中こぽりこぽりと夜ごとかがやく


  • 船室のシチューの皿にとけてありさめてゆく声(そこにいますか)


  • おとうとを鳥にさらわれたこどもだけならんでください白い雲梯




  • 小糠雨のなかを泳いでゆくからだ  進化過程をさかのぼる夜


  • 五十万年のあかとき孤島なる灯台守はパンを焼きおり



  • 牡蠣をかむわたしがかつて牡蠣だったころふいていたきんのうみかぜ


  • ひさかたの光の道とか二限目を抱いて河原を駆け抜けていた


  • 児は走りプールサイドにならびゆく足跡  ふたつ、みつ、よつ、いつつ


  • 視神経ちぎる音だけ七十数分流れているCDを焼く


  • 眠れなくてふわり車道のまんなかをあゆむ未明と明のあわいに





  • 貝塚の貝ひとかけをはがしとり靴職人の訃報などきく


  • オリオンのほうへと息をはくきみの白磁のいろの切る歯つぶす歯


  • ぱらり、と一枚の葉がおち古典ギターはねむる  あすゆきがふる




ここからは解説です

読まなくていい


・満月の

ほんとうは満月じゃなかったし薄氷じゃなくて芋畑だし兵士じゃなくて高校生ですけど、全校生徒で夜通し歩くよくわからない学校行事です。


・三月の

数合わせです、電気ウナギは光りません。


・船室の

「何々の」という初句が多いですね、あと冒頭の歌と「ゆく」がかぶってるのがダサい、数合わせです。


・おとうとを

あとで寺山修司

あたらしき仏壇買いに行きしまま行方不明のおとうとと鳥

という短歌を知ってなんだよそれという感情になりました、「鵜」の漢字のせいとかですかね、というか短歌やろうっていうのにこんな歌も知らないのが終わってるんですかね。


・小糠雨の

多分5月ごろの歌です、5月ごろはそんな感じ。


・五十万年の

「あかとき」とか「おり」とか言っとけばそれっぽくなるとか思っていたみたいです、パンを焼いて暮らしたい。


・環礁の

よくわからない感じになってしまいましたが、汀という言葉が好きなのとどこかで見た博物館が水没している絵が素敵でした。


・牡蠣をかむ

牡蠣はおいしい、海を全部食べた味は絶対牡蠣の味だと思います。


・ひさかたの

ひさかたのという枕詞が好きです、特に音が好きです。これは要するにサボりの歌です、晴れた日は午前中をサボって河原で自転車を漕いだりしていました。


・児は走り

記憶が正しければはじめて作った歌です、プールサイドは良い。


・視神経

・眠れなくて

今だったらとても載せてない二首です。「視神経」のほうは学園祭のBGMに使う波の音だけのCDを焼いていたときに思いつきました、吉川宏志

皿の上の肉を食いおりいま我は無数の見えざる血管を食う

の影響をだいぶ受けている気がします。

「眠れなくて」の歌はほぼ事実ですがほんとうは自転車です、「眠れなくて」なんてどストレートメンヘラちゃんな表現ではなくてもっと他にあっただろうと思います、もう絶対書きません。


・平原に

ちょっと前いろいろあったらしいウクライナ情勢とかは全く関係ないんですけど、オカリナの音からの連想です、ちょっと前におばに借りていたオカリナを落として割りました。


・貝塚の

もともとは同級生の母親が死んだみたいな話だったんですけどこねくりまわしてるうちに靴職人に、サラダ記念日ももともと唐揚げかなんかだったみたいなのでその辺のねじ曲げは許容されると思いたい。


・オリオンの

歯が好きです。


・ぱらり、と

クラシックギターを練習しようとしていたことがあって、結局練習しませんでした。


・全体

会報のほうでは最後に2行ぐらいあけて小さい字で「あすゆきがふる」と入れていたんですが、恥ずかしいので消してしまいました。

当時は順番や構成、あとサ行とかハ行とかそういう音の統一感をだいぶ意識していたようです、もっと歌の中身をがんばれよって話ですけどそういうのも気にしだすと気になってしまいます。

全体的に笹井宏之あたりが大好きな人みたいになってしまった感じが、実際大好きですけど、でもたぶんもう短歌とかしばらくやりませんけど。