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逆さクラゲ

長い文章

Mi Refugio / Mosalini Teruggi Cuarteto/ Tango de HoY

www.youtube.com

 去年の10月に招待券をもらって武蔵境でやるタンゴのコンサートに行った(場所が場所だから交通費で結局普通のオケの学生券ぐらいの値段にはなってしまった)。

 大学の同じ学科を卒業したらしい早川純さんっていうバンドネオン奏者と、ロンドン王立音楽院を出てる久保田さんっていうピアニスト(借家に電子ピアノしかないのにそれで練習してなんかのコンクールで1位とったエピソードが印象的だった)、それに現代音楽作曲家・ダニエル・テルージを父に持つベース奏者のレオナルド・テルージ(19歳からベースをはじめてコンセルヴァトワール出たらしい、ピアノもやたらと上手い)のトリオで、このテルージさんがセットリストのいくつかの編曲を担当しており、これがめちゃくちゃに素晴らしかったのだ。

 タンゴを編曲することになったので不意に思い出したのだけれど、彼らは動画を投稿しておらず、色々探してやっと見つけたのが冒頭の動画である。バンドネオンを弾いてるモサリーニさんはタンゴ界では結構有名な方らしい。

 詳しくないんだが、タンゴというのは(かっこいいのはわかるけど)ちょっと自分には情感的すぎるというか比較的ダサい音楽のような気がしていた。しかし、アルゼンチンの血を持ちながらフランスで生まれ育ったテルージさんの編曲には、そのダサさをひょいと跳び越えてしまうような洒脱さがある。

 掲載した編曲はまだ正統派タンゴな感じがするが、それでも時々ハッとするような和声やリズム感に遭遇する。楽器の扱いも卓越しており、2分30秒地点からのアンサンブルとか4分10秒地点からなんかは聴いていて本当にドキドキする。10月のコンサートではもっと挑戦的・実験的な作編曲も多く(彼は新曲も作る)、いくつかはほとんどタンゴの編成でジャズをやっているような印象のものだった。

 20世紀前半フランスの作曲家をよく聴く。調性の軸がブレて無調・複調や種々の旋法が当たり前に聴かれるようになるのみならず、外部からガムランとかジャズとかが入ってくるこの時代に、彼らがそういった外来の音楽を「こんな感じでしょ?」って(真面目でないのとは違うんだが)さらっと、一種傲慢な姿勢を持って、「優越民族・フランス人」たる自分の技法やセンシビリティの中に取り入れてしまう感じがとても好きだ。テルージさんの音楽にはこういった感性に通ずるものがあり、彼は多分もっと真摯にタンゴに取り組んでいると思うけれど、あまり深刻な表情を見せることはなく、やはり「こんな感じでしょ?」「こんなの面白くない?」といった知的な遊び心が随所に見受けられる。もっと聴きたい。たくさん動画上げてほしい。CD入荷してくれ。

 

追記:原曲です。これがああなるのか。

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