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逆さクラゲ

長い文章

リッキー・デュコーネイ: 刺青女の物語(翻訳)

The Complete Buther's Tales 翻訳の第2回 The Tale of Tattooed Woman です。最初と最後のパラグラフの訳がいちばん不自然でウケる。

刺青女の物語

 欠点はわたしの美しさを高めるものなの、びっくり人間がもっと尊敬される時代だったなら、男たちはお金以上のものを払ってでもわたしに会おうとするでしょうね。きっと彼らが持ってるいちばん珍しいものだって持ってくるはず。わたしが望むどんなものでも。そしてわたしが望むのは肉のかけら。

 そのことについて文句は言わないわ。きょうび誰もひげ女に野次を飛ばしに来ようなんて思わない。トカゲ女に恋をしようとも。みすぼらしいテントはがら空き。でもいつかは男たちがわたしを見るためにチケットの列に押し寄せるのよ、砂糖を運ぶ蟻みたいに。たくさんの男たちがわたしに恋しては失恋するわ。彼らは何度も戻ってきては言うの、あなたにぞっこんなんです、あなたはわたしの寝床で生き血をすする美しい吸血鬼です。何人かはわたしに愛を囁きもするでしょう。でもわたしはよく知ってる。彼らが愛するのはわたしの表面だけ、それはとてもよくできた罠。

 何年も前、それがどのようにして始まったかわたしに尋ねたでしょう。あなたはとても我慢強かった、そして、不思議ね、わたしを恐れなかった。わたしはいつかあなたに親愛の情みたいなものを抱いていた。あなたの大胆さは報われたのよ。今からあなたに、わたし自身についての話をしましょう。でも手短にね。世界は危険なことばかりだし、わたしは静かなのが好きだし。

 わたしは双子として産まれた。出産の苦しみで母親は死んだわ。双子のもうひとり、不恰好に膨らんだいきもの、これも死産だった。わたしは産声をあげた、そして7年間叫び続けた。

 落ち着きのない子供だったわ。ガマガエルやらコガネムシやら、手のひらに乗るやいなや引きちぎってバラバラにしてしまったし、蟻が砂にまみれた犬のフンを巣穴に運ぶのを見るのが楽しみだった。全ての存在に憎悪を抱いていたわ。わたしの人形、その蠟引きの顔、繊細な手、つまらない絵本に象牙の動物たち。父親カナリアをくれたことがあったけど、わたしは癇癪をおこしてその頭を嚙みちぎってしまったの。父親は絶望して、わたしを永遠に監禁してしまうところだった。物や生き物であふれたこの世界を守るために。

 しばらくの間、わたしの中に眠っているナイフみたいな憎しみは鞘にしまわれていた。人生は平和だった。庭でバラが育っていた。わたしはミルク粥をよく食べたし、もうドレスを引き裂いて布きれにしてしまうようなこともなかった。わたしはつまらない雑誌の写真を見つめることや、太って馬鹿みたいな顔をしたぶくぶくの人形を世話することに気持ちを集中するように努めた。お昼寝をして、とてもいい子で過ごしていた。あまりにいい子だったから、父親はクリスマスの日にすごいプレゼントをくれた ―信じてよ― 平べったい鼻をしたパグ、とっても素晴らしい血統を持っているのに、息をするのもやっとみたいなあの犬種。わたしはその小さくて不揃いの歯が肉をかじるのを見るのが好きだった。ばかな動物、わたしのことをとても愛していた。ベッドではいつもわたしの足元で眠っていたの。毎晩何時間もその太い首を撫でたわ、生命がそこで脈打っているのがわかった… ある日、わたしは庭師がいたずらをする狐のために仕掛けたわなに、そのパグがかかるように仕向けた。それが血を流しながら死んでいくのを見ていたわ。獣が苦しむその姿は、わたしの心を喜びの洪水で満たしていった。

 しばらくして恐ろしくなったわ、そしてわたしの破壊への欲望はとどまるところを知らないのだという残酷な事実を悟った… お父さんの書斎にあったペンと盗んできたインクで肌の下に一つの印を残したわ、手首にあるその青い刺青は、「二度と殺すな」ということを自分自身に思い出させるためのもの。

 ここにあるわ、森の地面の黒い種みたいなものかもね、この小さい薔薇の刺青の真ん中にある、本当に小さな点。そしてこの花は、たくさんの花々、葉っぱ、紫色をした棘からなる花の腕輪の一部。似たような花輪が足首と首にもあるわ。

 さあ、そろそろ行く時間よ。外では観客がもう我慢できないとばかりに興奮して待ってる。わたしはサテンのケープをもうすぐ床に投げ捨てるわ、野次と一緒に。あなたは言ったわね、こんな花輪は単なるお飾りに過ぎない、その胸の上で闘っている二頭の馬や、盲いた眼がちょうどへそのところに来ている赤いドラゴン、わたしの腿の、いつだったかあなたがいちばん誉めてくれたわね、手負いの鷲とケンタウロスが繰り広げる死闘なんかとは美しさの点で比べ物にならないって。そう、わたし心のの山火事みたいに猛烈な炎、わたしの官能的なはだか、わたしの虎のような野性は、まだ衰えてはいないわ。