逆さクラゲ

長い文章

リッキー・デュコーネイ: 産まれぬ神の子(翻訳)

Rikki Ducornet: The Beast (from The Complete Butcher's Tales)

産まれぬ神の子

  ぼくはけものの胃の中に住んでいる。ぼくは彼女を育てながら、そこで眠っている。彼女はぼくに優しい。ふかふかとして、あたたかい。

 彼女がぼくを食べたとき、その目は愛にあふれていて、その牙はやわらかかった。怖いとは思わなかった、彼女が(一粒のオリーブみたいに)ぼくを呑み込んでしまうことを許した。

 「あなたは幸せになるでしょう。」ぬるぬるとぬれた喉を滑りおりているとき、けものが言ったのがきこえた。ぼくは胃の中に落ちると、木の葉とシダと羽毛で出来た巣の中の鳥みたいになって、すぐ仕事にかかった。

 日中、彼女は眠っていて、胃の中は曇っていて静かだ。夜になると、彼女は狩りに出かける(小鳥の肉、そのきらきら輝く卵、そして甲虫のなかまをとりわけ好む)。満腹になると、大きな猫みたいに喉をごろごろ鳴らす。恋の季節になると、セイレーンみたいにきれいな声でうたう。

 彼女のおなかに住んでいることは幸せだ。もう一度だけでもその顔を見ることができたら、この世の何よりも好きになってしまうんだと思う。彼女はぼくの愛するけもの、ぼくは彼女の子供―産まれぬ神の子、寄生体。